こんにちは。
潜トモはひとりもいないモトコです。
ノープロブレム。
潜水艦映画 K-19(2002年/米)は
私が以前通っていた英会話スクールの講師、
子どもの頃の夢は映画監督というオーウェンの推し映画でした。
ついでに好きなニッポンのアニメは「進撃の巨人」
それを聞いたとき
「ん?潜水艦、好きなん?」と訊ねてみましたが
「いや、ハリソン・フォードが好きなんだよ」との回答でした。
ノープロブレム。
そう、ハリソン・フォードとリーアム・ニーソン共演。
艦長と副長。
北風と太陽みたいなキャラの対立。
アメリカ人とイギリス人がロシア人を演じるとか、
だけど言語はほとんど英語だとか
まあハリウッド映画ってそういうもんってことで。
戦闘シーンはありません。
生きるか死ぬか。
自分が今、何のためにここにいるのか。
One for All, All for One.
一人はみんなのために、みんなは一つの目的のために。
個々の葛藤、人間ドラマに注目です。
でもねえ、
いつだって偉そうなジジイは安全なとこにいますよね…
K-19:原子炉事故の実話がベース
K-19 あらすじ
1961年、東西冷戦下。
核開発競争において、アメリカにリードを許していたソビエトは
一刻も早く自国の報復力を誇示したいと焦っていました。
まだ不備の残る新型ミサイル原潜K-19をテスト航海させ、
行った先でミサイルを試射するという任務を与えられたのは
ストイックでストリクトなボストリコフ艦長。
(↑早口で言ってみ)
「クルーは家族、艦長は父親」と考え、
部下の信頼を集めるポレーニン副長と対立しつつも任務の遂行に臨み、
それはうまくいっているかのように見えました。
原子炉の冷却水漏れが発覚するまでは…
場所はすでにNATO基地の目前。
メルトダウン、核爆発の恐れが高まる中、
どうするぅ?もうフネ棄てるぅ?
棄てない。
味方のフネ呼ぶぅ?
なんならアメリカのが近いし。
バカ言うな!
国家を裏切れない。
助かっても収容所行きだよ。
でも死にたくないし。
じゃ修理するぅ?ゲンシロ…
誰が?
防護服ないんですけど?
あるでしょ。
それレインコートですけど?
・・・。
からの、
One for All, All for One.
サブタイトルは【未亡人製造機】
K-19はソ連時代に実在した潜水艦です。
実際、原子炉事故の他にも衝突事故や火災事故など起こし
WidowMakerと呼ばれていたそうです。
※widow:後家、未亡人
この不名誉なニックネームについては映画の中でも触れられています。
映画では出航前から不穏なことばかり。
作業中の死傷者、進水式のシャンパンも割れず。
しかしソビエト待望のミサイル原潜ということで
軍のジジイらは、これでアメリカに目にモノ見せてくれるわ!と。
艦長&乗組員はその栄誉を(一応)噛みしめつつ、
(一応)使命に燃え乗艦したのでした。
ムチャ振り艦長vs安全第一副長の対立萌え
対立したり、絆だったり。
艦長と副長のコンビネーションは、潜水艦映画における妙味です。
それにしてもボストリコフ艦長の塩対応。
すがすがしい!とはこういうことを言うんですなあ。
以下【切り抜き】でお送りします。
■艦長が水深350mまで潜れと言うので↓
圧壊深度ギリギリです!
知ってる
(コーヒー飲みつつゆったり構える)
水圧で艦がボコボコ凹む。
みんなの緊張は高まるが、ある程度は想定内のようです。
■そしたら今度は凍結した海面に緊急浮上すると言うので↓
危険です艦長!!
君の意見は聞いておらんよ
安全深度にとどまることをお勧めします(汗)
・・・(無視)
浮上速度が早すぎます。
制御不能になる恐れが…
同感だ(力強く)
安全深度の維持を進言します(願)
却下する!(即答)
K-19の艦橋が厚さ1m(これは薄い方らしい)の氷を突き破って浮上。
衝撃に備えー!
氷を切り裂きながらガシガシ進む。
ここはVFXで気合入ってる。
そしてミサイル試射→成功。
乗員歓喜!
モスクワから祝辞。
ボストリコフ艦長は怖いもの知らずなのではなく、
ムキになっているのでもなく、
艦長として、艦と乗組員の能力の限界を測っていたのです。
無言のまま部屋に引っ込む副長。
抗議の意。
勝手に持ち場を離れたと報告書に書く!
私もあなたが艦とクルーを危険に晒したと書く!!
曲げない二人。
艦長の突き抜けた判断を(反感を堪えて)グッと受け止める副長というのもいるわけで、
そういうのは軍人としての誇りとプライドかと思っていたので、
温厚なポレーニン副長の反撃はなかなか新鮮なものがあります。
でも勝手に部屋に戻っちゃうのは仕事放棄じゃないかな。
メイキングは見ないと損
監督キャスリン・ビグロー
女性なのですが
随分シビアな骨のある映画を撮る監督だなと思いました。
メイキング映像からうかがえる熱の入れよう。
「ん?潜水艦、好きなん?」と思いましたが、
後にハートロッカー(2008年)でアカデミー賞6部門を獲得するなど、
もともと「男っぽい」作品を作るってことで定評のある方です。
なぜ人は、少なくとも一部の人は危険に挑みたがるんだろうか。
危険を感じるアンテナが鈍いんじゃないだろうかw
K-19の再現
映画のK-19はロシアの古い潜水艦(レストランにする予定だったが工事が中断していた)をほぼ作り直したものでした。
CGではなく、ちゃんと洋上航海するシーンがあるので
化粧張り程度の直しではなかったようです。
内部の様子も、当時のK-19の図面から再現。←セット
いくら古くても潜水艦の図面なんて軍事機密じゃないのかと思いましたが
映画用に使うのOKなんですね。
そこに撮影機材が入るのに、狭さもそのまま。
あまりに狭いので、
潜水艦乗組員には身長制限はないのか気になったというリーアム・ニーソンの身長は
192㎝だそうです。
※身長制限なし
※実際に2mを超す艦長もいた
放射能被曝メイク
放射能トラブルを解消すべく
若い乗組員たちが奮闘する話です。
ヒトの身体が強い放射能を浴びるとどうなるか?
当時いろいろリサーチをしたけれど症例写真がなく、
細胞破壊に関する医学用語の記述から、皮膚がどんな状態になるか想像し再現したそうです。
劇中の放射能被曝メイク(メイクっていうか工作に近い)は、
意図的にかなり控えめな表現にとどめたそうですが、
実際にはこんなもんじゃないんだろうと。
あのおぞましい状態が顔だけじゃなく、
体全体に起こるんだろうと思われ
そういう意味でもこのメイキングは見た方がいいと思いました。
体の痛みやその深刻さは
経験した人にしかわからないけど
知っておくのは大事だと思うので。
あとは原子炉内の青い光。
これはそれっぽく見せるための演出かと思いましたが、
放射能は本当にこういう色になるのだそうです。
しかも青いライトを使っているのではなく、トニックウォーターで…
DVD入手の際はぜひメイキングも!
潜水艦ネタ:モトコ視点で恐縮です
戦闘モノではなく事故モノなので
あんまりときめく内容ではないのですが…
割れないシャンパンボトル
出航前の儀式にて、シャンパンのボトルを船体にぶつけるシーンがあります。
しかしボトルは割れず、クルーの一人が「俺たち呪われてる」と呟きます。
割れるのが正解。
この儀式の始まりは非常に古く、
昔バイキングが嵐に会うと、奴隷を生贄として海に投げ込んでいたのですが、
次第に儀式としてそれを船出前に行うようになりました。
その血の名残として、もともとは赤ワインの瓶が割られていたそうです。
海自の進水式でもシャンパン割ります。
詳しくはこちら↓
食料と魚雷の積み入れ
潜水艦にはクルー128名分の食料も積み込むわけですが、
大きなコンテナを一度に積めるような入口はなく、
みんなでバケツリレーみたいにして、
人が乗り降りする上部のハッチから地道に運び入れます。
木の箱に入ったオレンジを手から手へ運んでいくのは
これはこれで何かの訓練のようです。
魚雷をどうやって潜水艦内に収めるか?
これはクレーンを使って専用の入り口から積んでいきます。
でもこっちの映画の方がその辺わかりやすいかも↓
記事ができてくるとこういう時便利ですね。
個よりも大事なもの?
※以下ほんのりネタバレ
栄誉とか威信とかいう言葉の裏に
虚栄と脆弱さを抱えたK-19。
そこで潜れだの浮上だの言いながら
火災や浸水を想定した訓練をどかどかやらせて
乗組員の反感を買ったりもした艦長。
だけど、無茶苦茶にがむしゃらにやった経験だけが
人やチームの器をより広げるのかもしれません。
一人じゃ到底できないことを
やり遂げるためのチーム。
欠員が出たためたまたま呼び出された、原子炉担当士官バディム。
(学校出たて、実務経験なし、でも士官。婚約者あり)
原子炉での修理を行う際、
被曝した仲間を見て足がすくみ、
完全に泣きじゃくる彼に代わり、別の仲間が原子炉に入りました。
その後の彼の心境の変化を考えるだけでも
(顔つきも変わってくる)
この映画の中で一番尊いのは
その「変化」じゃないかしらと思うのでした。
確かに、
バディムはチームのためにいた。
でもそれは自分自身の目的を果たしに行くようにも見えます。
終わりに:チームは個でできている
だからチームのために行動するには
何が必要なのかな。
逆に「個」として尊重されてることが大事なのかな。
英雄と呼ばれたいわけではないはずで。
その中で必要な人間になりたいはずで。
目的を共有したいはずで。
みんなのハートをがっちり掴むポレーニン副長でさえ
いや、彼だからこそ
レインコート程度の代物を「放射能防護服だ」と言って
部下に与え修理に当たらせた。
チームの目的はなんだ?
ただそうは言っても
誰だって生きて輝けた方がいいに決まってるので、
破壊ツールを作ることに精を出さなくてもいいと思います。
最初から。
残酷で滑稽な話でもあるところが、悲しい。
全ての人に等しく
ツケは回ってくるだろうから。
ではまた!
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