悲報!日本海軍が潜水艦の使いどころを間違えていた件|通商破壊の話

潜水艦のこと
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こんにちは。
国語辞典を完全にブックエンドとして使っているモトコです。

わかっています。
あの厚みと重量が、ほかの本たちのストッパーではないことを。

ただでさえもグーグル先生に仕事場を追われた辞典。
本領発揮できず。

そう、人はときどき間違えます。
特性を見誤って、使い方を間違えているアイテムはありませんか。

今回は、潜水艦のそんな残念すぎる過去を調べてみたいと思います。

勇気を出して、
ついて来てください。
え、何?

潜水艦運用に関する「酷評」

私のブログではお馴染みのトム・クランシーです。
そろそろ謝礼をお支払いしないといけないかもです。

彼は日本(旧海軍)の潜水艦運用について、著書にこう記しています。

日本は第二次対戦中の最も先進的な潜水艦のいくつかを製造したが、その先進性に見合う運用ができたことは一度もなかった。

トム・クランシーの原潜解剖

……衝撃的なのでもう一度言います。
「その先進性に見合う運用ができたことは一度もなかった。」

ちなみにUボートで有名なドイツのことは、なんて言っているでしょうか。

地球上のあらゆる国家の中でも、ドイツほど潜水艦の軍事利用の面で豊かな伝統を備えた国はない。

トム・クランシーの原潜解剖

褒めている。

別の本を見てみましょう。

戦後、敵将・ミニッツ提督は「主要な武器がその真の潜在力を少しも把握・理解されずに使用されたという稀有な例」として、日本の潜水艦をあげている。

潜水艦 誰も知らない驚きの話/河出書房新社

これは聞き捨てなりません!

過去の大戦で日本は、潜水艦をだいぶもったいない感じに使っていたようです。

ものづくりは日本のお家芸ですが、
いいものが作れるのに、使い方を知らない?
なんたる悲劇

何をどう間違えちゃったのか調べたいと思います。

まずは比較用として、
イギリスに対する脅威で世界にその名を轟かせた、Uボートの例を見てみましょう。

■参考文献:「海上輸送力の戦いー日本の通商破壊戦を中心にー」荒川憲一/防衛研究所

Uボートの通商破壊

通商破壊って?

wikipediaによると、通商破壊とは「戦時に通商(貿易)物資や人を乗せた商船を攻撃することによって、海運による物資の輸送を妨害すること」とあります。

第一次世界大戦時、Uボートは主に群狼作戦による通商破壊戦で大きな戦果をあげ、イギリスを降伏の手前まで追い込みました。
※群狼作戦:複数の潜水艦が連携して輸送船団を襲う。オオカミの狩りの仕方に似ていることから。

(イギリスが当時どんだけ戦慄していたか、というのも文献には載っているのですが、引用すると長いし、切り取ると中途半端すぎるので、、、割愛します。とにかく崖っぷちでした。)
↑沈められた船、1カ月で90万トンって言われてもピンとこない。

前回の記事で紹介した映画「眼下の敵」でも、マレル艦長の貨物船が通商破壊に遭いましたね。

交戦相手国が物資(食糧や資源など)の供給を、主に船の輸送に頼っている場合、海上交通の遮断は国家の危機に直結します。
ゆくゆくは経済活動も破綻し、国民が飢えることになります。
また国外で戦っている場合は、武器や食糧の補給ルートを断たれることにもなります。
海運に依存する相手を追い詰めるには、非常に有効な作戦だとわかります。

モトコの<br>独り言
モトコの
独り言

ぶっちゃけ海の上で戦うより効率いいんじゃないの?

戦争体力を奪って、地味に息の根を止めていく。

地味におそろしい。

というか、日本だって太平洋戦争でこういう目にあったじゃないですか。
戦地に送り出したきり補給ができなくて、大勢の兵士が餓死したじゃないですか。
日本はアメリカなどに対して(潜水艦での)通商破壊をしなかったということですか。

なぜなんでしょう???

ドイツの例から学べたはずなのに。
これはとっても不思議です。

持たざる者の戦略

そもそもドイツの艦隊はイギリスに比べて劣勢でした。
それを補完するために潜水艦が運用されましたが、イギリスも対潜策を講じるようになり、結果、潜水艦の戦艦に対する有効性が薄れていきます。

そこで、ドイツは潜水艦を通商破壊に用いることにしました。

通商破壊を行う側は
ゲリラ的に実施できるのに対し、防ぐ側には多大な労力(護衛と撃退)が必要となります。

だったらなおさら、
アメリカなどと比較して軍事力の劣る日本も、通商破壊に力を入れればよかったのでは、、、ないのか、、、違うのか、、、。

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やられる方は果てしない警戒に全集中。これはきつい。

日本海軍の国防思想

制海権獲得のための艦隊決戦至上主義

第一次世界大戦以前から、日本海軍には「艦隊決戦至上主義」という考えが権威的でした。
国益のためには制海権を取らなければならず、そのためには艦隊同士の戦いに勝利することが最も重要とする考えです。

明治時代の国防思想をまとめた本に、アメリカ海軍士官のマハンという人のこんな格言が引用されているそうです。

いやしくも世界を管制せんと欲せば 
先ず世界の富を管制すべし

世界の富を管制せんと欲せば 
必ず先ず世界の貿易を管制すべし

世界の貿易を管制せんと欲せば 
必ず先ず世界の海上を独占すべし

世界の海上を独占と欲せば 
必ず世界の海上における紛争に必勝を期すべし

海上における紛争に必勝を期せんと欲せば 
必ず先ず豪勢なる海軍を備うべし

これによく似た構造の格言、わりと見かけますが。

つまりは「強い海軍を持つことが、国の富強の第一歩」ということですね。
富国強兵ではなく強兵富国。

強い海軍がその国の経済力さえも先導する、という考えが強調されました。

モトコの<br>独り言
モトコの
独り言

艦隊決戦っていうと戦艦大和とかが、大砲撃ちまくってるイメージが浮かぶのですが。なんていうか、派手でわかりやすい。

戦ってます!感出るしね。

艦隊決戦支持は、日本人の精神論的なものとは無関係なのかな?

そんな中での潜水艦の位置付け

潜水艦は艦隊同士の戦いを勝つために、そこへどう役立てるか、どう寄与させるかについて重点が置かれました。
あくまでも主役は戦艦で、潜水艦は脇役っていうか、黒子みたいなものでしょうか…。

艦隊決戦(邀撃ようげき作戦)の補助機能、「奇兵」という運用です。

そのためその仕事に見合った性能を満たすべく、
○敵の艦隊を追尾するための高速性
○敵の基地まで行ける航続距離
が求められ船体、エンジンは大型化し、敵に探知されやすくなりました。
(それダメ!絶対!ってやつだ。)

なぜドイツの真似をしなかった?

日本が艦隊決戦至上主義にこだわり続けたのは、
決戦に勝って制海権を得ることができれば、その結果、通商破壊がしやすくなり、自国の通商の安全も自動的に確保されると考えていたからです。

そのため全ての力を艦隊決戦だけに集中させ、通商破壊・保護に戦力を割くことはしませんでした。

しかしUボートを見ると、
潜水艦にとって相手の制海権なんて、あんまり意味ないんじゃないかと、ど素人モトコは思います。

だって潜れるんだから。

文献にはこうあります。

国防思想上の文脈からすると潜水艦が実際的兵器として登場したことは、戦前の制海権の概念を修正せねばならぬ事態であった。

「海上輸送力の戦いー日本の通商破壊戦を中心にー」荒川憲一/防衛研究所

でも修正されることなく、潜水艦の運用は従来のまま…。

第一次世界大戦がそれまでの戦争と違うのは、
軍人だけが戦争しているのではないということです。

通商破壊によって自国民が飢えるということは、
戦争が行われるのは戦場だけではなく、
命を脅かされるのは、軍人だけではなく、
またその原因となるのは、直接的な戦闘だけではないということですね。
国家の全てが戦争に参加です。

戦争のあり方が変わって、
潜水艦という見えない兵器の脅威を前にした時、
「艦隊決戦に全力を!潜水艦、お前も手伝え!」みたいな考えは、時代に合ってなかったんじゃないかと思います。

潜水艦て特殊な兵器だと思うので、
「お手伝いポジションなんて失礼だなまったく!」とも思います。
代弁してるんです。

終わりに

残念なのは「組織」だと思う

実際のところ現場からは、

艦隊決戦に資する漸減手段として潜水艦を運用することは通商破壊戦に運用するのに比して効果的ではない

海上輸送力の戦いー日本の通商破壊戦を中心にー」荒川憲一/防衛研究所

という所見がたびたび提出されていたそうなのです。
こうしたことに反応することもなく、組織となるとどうしてこんなに鈍いんだろう。

艦隊決戦に集中しているだけでは、
総力戦という新しい戦争スタイルを勝ち抜くことはできないわけですが、
組織として、戦い方を変えていくことができませんでした。

モトコの<br>独り言
モトコの
独り言

日本人てずっと続いていることを変えるのが嫌い?

受け継ぐことが責任と思うのか?

すぐ「伝統」とかって言うし。

これじゃ変化に合わせられない。

布団から出ろ

「変化を恐れるな」とはよく聞きますが、
変化するというのは正直
めんどくさいです。

慣れたことを手放して、新たにイチから始めるのは、
冬の寒い朝、意を決して布団から出るのと同じくらい勇気がいります。

…つまらないことを書きました。

権威に従うのは日本人らしいのかな。
軍隊っていう民主主義じゃない集団には、それが生まれやすいのかな。

私は、
自分のトライ&エラーから得る学びを、
更新していこうと思います。

今回の通商破壊については多くの文献や資料があり、とても興味深く読みました。
いや、ほんの一部ですけど。

今後はシーレーン防衛や安全保障についても勉強したいと思います。
…って、私は何者になるんだろう。

ではまた!

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